はじめに
教材を作成したことがある方は、以下のような難しさを感じたことがあるかもしれません。
- 受講者が途中で挫折してしまわないか不安
- 難しい・つまらないという理由から学習を続けてくれないかも…
- 必要な情報をうまくまとめることができない
- など
特にプログラミング初心者は、エラーに何度もぶつかり、挫折してしまうことがあります。このような状況を避けるためには、ただ情報を羅列するだけでは不十分です。学習者の理解度を深め、モチベーションを維持するための工夫が求められます。
この記事では、初心者向けのプログラミング教材を作成する上で、特に意識すべき5つのポイントを紹介します。これらのポイントを押さえることで、学習者がスムーズにプログラミングを学習できる教材を作成することができます。
なお、私の経験則をもとに書いている関係で「プログラミング教材」としていますが、プログラミング以外の教材にも通ずる部分はあると思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
ポイント1:目標を明確にすること
学習目標を設定する
まず、教材を通して読者に身につけてほしいスキルを明確にしましょう。例えば、「HTMLとCSSを使って簡単なWebページを作成できるようになる」「Pythonで簡単なスクリプトが書けるようになる」などが考えられます。
さらにできることの深さも意識しておくと良いと思っています。
例えば「HTMLとCSSを使って簡単なWebページを作成できるようになる」と言ってもどのくらいまで教えるのかによって教材の内容は大きく変わります。
- 教材で学んだことをトレースしてWebページを作成できる
- 教材で学んだ以外のことも自分で調べながらWebページを作成できる
- デザインデータをもとに自分でWebページを作成できる
のように、できることの深さを把握した上で、今回はどこまでを目指すのかを決めておくと良いでしょう。
学習目標をスキルに分解する
学習目標を立てることができたら、今度は目標を達成するために必要となる、より小さなステップに分解しましょう。
例えば、「HTMLで文字を表示する」「CSSで文字の色を変える」など、具体的なスキルに落とし込むことで、学習の進捗を可視化し、達成感を味わってもらいやすくなります。
また学習目標によっては、「自分で知識を調べることができる」や「コーディングのミスを自分で発見して直すことができる」のように、プログラミングの文法以外のスキルも忘れずに検討しましょう。
この学習目標の分解は、内容によっては複雑なツリー構造のようになることもあります。
対象となる学習者の前提知識を設定する
学習目標とスキルを決めることができたら、学習者の前提知識を設定します。
全くの初心者を対象とするのか、ある程度のプログラミング経験がある人を対象とするのかによって、教材の内容は大きく変わってきます。
企画時点で学習目標と前提知識がふわふわしたまま進んでしまうと、今後の設計・制作段階でうまくいかないリスクが高まってしまいます。
ポイント2:段階的な学習設計
小さなステップに分割する
いきなり複雑な内容から始めるのではなく、簡単なことから始め、徐々に難易度を上げていくようにしましょう。例えば、プログラミング言語の文法を学ぶ前に、コンピュータの基本的な仕組みについて説明するなど、段階的な学習設計が重要です。
一度に新しい情報を盛り込みすぎない
1つ前の小さなステップに分割することと似ていますが、一つのセクションで扱う内容は、できるだけ絞り込みましょう。新しい概念を一度にたくさん説明すると、読者は混乱してしまいます。各セクションで1つのテーマに絞り、丁寧に解説することが大切です。
楽しさや達成感を味わえるようにする
各セクションの最後に、簡単な演習問題や課題を用意することで、読者に達成感を味わってもらいましょう。小さな成功体験を積み重ねることで、学習意欲を維持することができます。
学習者がモチベーションを高く持って勉強し続けてもらうには、いかに楽しさや達成感が感じられる演習を用意しているかが一番大切です。
ポイント3:実際に練習できる機会を作る
学んだことを確認できる演習を用意する
各セクションで学んだことを定着させるために、演習問題を用意しましょう。簡単なコーディング問題や、クイズ形式の質問など、様々な形式の演習が考えられます。
プログラミング教材であれば、実際にプログラムを動かすような演習問題だとより良いと思っています。
実践的な課題を用意する
最終的には、学んだ知識を組み合わせて、実際に何かを作るという経験が重要です。簡単なWebサイトを作ったり、ゲームを作ったりするなど、実践的な課題を用意することで、学習のモチベーションを高めることができます。
また1つ1つの文法を学ぶだけでは、活用するイメージが湧きにくいです。なので、実際に学んだ文法を組み合わせながら簡単なWebサイトなどを作ることで、より実践での利用イメージがつくこともメリットです。
ポイント4:わかりやすい言葉を選ぶ
専門用語を避ける
プログラミングには専門用語がたくさんありますが、初心者には難解な言葉です。できるだけ理解しやすい言葉で説明しましょう。どうしても専門用語を使う場合は、必ずわかりやすい説明を加えてください。
比喩や例えを用いる
抽象的な概念は、具体的な例えを用いて説明すると、より理解しやすくなります。例えば、「変数」を「名前をつけておいた箱」に例えるなど、身近なもので置き換えることで、イメージしやすくなります。
プログラミングに関しては、すでに世の中多くの方が概念を例えてくれているので、それを参考にすると良いでしょう。
図やグラフを活用する
図やグラフは、文章だけでは伝えにくい情報を視覚的に表現するのに役立ちます。特に、プログラミングの処理の流れやデータ構造などを説明する際に効果的です。
どうしてもプログラミングとなると難しく感じてしまい、文章だけで理解できる人は限られてしまいます。その結果挫折してしまうこともあります。
なので、なるべく難しい説明のときや、状況が複雑なときなどは、一目でわかるような図解を入れると良いです。
例えば、「Webサイトがブラウザとサーバーで通信を行って表示される」といった説明をするときなどは、図解を入れるようにしています。
ポイント5:フィードバックを取り入れる
読者からの意見を聞く
教材を公開した後も、読者からのフィードバックを積極的に取り入れましょう。どうしてもわかりやすい教材を1回で作るのは難しいです。教材を公開した後に、説明が足りてなかったり、良いと思った具体例が伝わらなかったりすると思います。学習者からの質問や意見を参考に、教材を改善していくことで、より良い教材へと改善することが大事です。
受講者のネガティブな意見は、目を背けたくなることもあると思いますが、改善のための貴重な意見と捉えましょう。
教材を改善する
読者からのフィードバックを参考に、教材の内容や表現を改善しましょう。誤った情報が含まれていないか、説明が分かりにくくないかなどを確認し、より良い教材を目指しましょう。
まとめ
以上が、教材制作で意識すべき5つのポイントでした。
初心者向けのプログラミング教材を作成する上で、重要なのは読者の立場に立って、分かりやすく、楽しく学べる教材を作ることです。目標を明確にし、段階的な学習設計を行い、わかりやすい言葉で説明し、実践的な練習の機会を提供することで、学習者はプログラミングの楽しさを実感し、学習を継続することができます。
この記事で紹介したポイントを参考に、あなたも学習者に役立つ教材を作成してみてください。